【神戸市】扇港湯
もし県外の人から「神戸の銭湯を案内してほしい」と言われたら迷わずこの銭湯に連れて行くだろうと思う。
駒ヶ林駅から徒歩1分。
「扇港湯」さんです。
扇港とはかつて神戸の港を指した言葉で、港が扇のような地形をしていたことからそのように呼ばれていました。
今ではほとんど使われない言葉ですが、風呂は昔日を物語ります。
2階に設置された謎のドア。
そして正面からは見えない鍾馗さん。
扇港湯の外観はよく見ると面白い。
レトロな湯のれん。では参りましょう!
玄関。
夕方に訪れたのですがお客さんの往来が激しかったので下駄箱の写真は控えました。
玄関のドアを開くと番台がお出迎え。
脱衣所はとっても広い。外は雪が散らつくほど寒かったので、風呂が恋しい。早く早く早く!と衣類をロッカーに押し込んでいざ!!
浴室のドアを開くと、ニヤつきが止まらなくなってしまう。
冒頭でも述べたように、私はここが一番神戸を感じてもらえる風呂屋だと思っている。
その理由として、一つは浴室の中央に設置された汲み出し洗い槽。
細長い湯船のようなものなのだが、人が浸かるのは御法度。あくまでも体を洗うために設置された浴槽です。
汲み出し洗い槽がある銭湯は全国でも3軒。それが全て神戸にある。全国でも珍しい、そして神戸でも珍しくなった浴槽にここでは出会うことができます。
そして、神戸らしさを感じる二つめの理由。それは浴室の壁に施された大きなモザイクタイル絵。なんと、神戸の夜景の絵です。
海から見た神戸。ポートタワーにビル、そして六甲山地。この題材のモザイクタイル絵は、流石にここでしか見られない。海に映る夜景の灯りも表現されていて、圧巻です。
女性側からはポートタワーの全体を見ることができます。1933年のポートタワーの完成を記念して設置されたという壁画。先代はいい物を注文したなぁと湯に浸かりながらしみじみ。
汲み出し洗い槽と神戸のモザイクタイル絵。間違いなくこの風呂屋にとって唯一無二の財産です。
ゆっくり浸かっていたので、ポカポカです。
風呂さえあれば冬の寒さなんてなんのその・・いや、湯冷めする前にはよ帰りましょう。
扇港湯さん、ありがとうございました!
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扇港湯
〒653-0043 神戸市長田区駒ケ林町2-20-12
営業時間 13時〜25時
定休日 月曜
2021年再訪風呂まとめ
【小樽市】小町湯(風呂跡)
2021年10月に、道内最古の銭湯であった小町湯さんが閉業されました。
小町湯さんの歴史は古く、明治時代からこの地で湯を沸かし続けていたとのこと。
本当は今回の旅で小町湯さんを訪れる予定を組んでいたのですが、数日間に合わず・・。
念願の入浴はできませんでしたが、その姿を一目見るためにやって来ました。
南小樽駅から徒歩5分ほど。
電車の中でもその姿を拝むことができます。
「小町湯」さんです。
いっぱいいっぱいのなかで営業を続けられていたのが伺える一枚。
このレンガと石を組み合わせた煙突が堪らなく渋い。
ぐるーりと周ってみました。
看板には、屋号の「小町湯」と「三〼」という文字。むむ、三〼ってなんだ?
三〼について調べてみたところ、以下のことが分かりました。
明治時代、今のオーナーさんの祖父にあたる方が蕎麦屋を買い取ったところ、なんと風呂屋もついてきたという。というのも、もともとのオーナーさんは、蕎麦屋と一緒に風呂屋も経営していたのだ。
買い取った蕎麦屋の屋号を「三〼そば」とし、ついてきた風呂屋が今の「小町湯」とのこと。
蕎麦屋と風呂屋、二足のわらじで経営を続け、三〼そばは地元では評判の有名店になったそう。そんな三〼そばが小樽から姿を消したのは昭和61年。明治の貴重な面影を残した建造物が珍しいと北海道開拓の村という博物館から寄贈の要請があり、現在は札幌に移築し、管理されている。
小町湯さんの看板書かれた「三〼」という文字は、かつて蕎麦屋と共に受け継がれ、経営を続けてきた名残だった。
ホテルのテレビでたまたま、「小町湯最後の日」という特集を見ることができた。暗い夜の町で小町湯の灯りがポッと消えた最後の映像が脳裏にずっと焼き付いている。
風呂屋の灯りを無くした町が、今日も普段と変わらず時を刻むのか。
永い歴史の灯りを灯し続けた小町湯さんに敬意を込めて、小町湯さんありがとうございました。
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〒047-0016 北海道小樽市信香町11−4
【函館市】大正湯
銭湯好きの方は今回のタイトルを見て「おっ!」と思われたのではないでしょうか。
そうです、北海道です。今回はあの超有名な「大正湯」さんへ伺いました。
函館どっく前駅から徒歩10分ほど。
なだらかな坂の上に、突如現れる洋風建築の風呂屋がこちら。
「大正湯」さんです。
いや、もう・・思わず万歳と叫びたくなる唯一無二の佇まい。
向こうに海が見える。そしてこの明るいピンクの外壁に、目の前の黄色の消火栓。異国の香りが漂う街で湯を沸かす風呂屋です。
函館がまだ箱館だった時代、ペリーの来航によって港が開かれ、異文化の受け口となりました。そのため、今でも函館には西洋の影響を受けた様々な歴史的建造物が残っています。
大正3年に大正湯が開業。
昭和3年に建て替えが行われ、現在の姿となりました。
西洋の建築を模した建物。けれど、ヨーロッパのどこを探してもこんな建物はない。外国なんて行ったことのない日本の職人さんがつくった建造物。あくまでも洋風ってところに浪漫があって、堪らなく心を打たれる。
建物裏と煙突。
玄関の側面にはスタンドグラス。
明るいうちに写真を撮って、入浴は夜になってから再度訪れました。
では、お邪魔します!
玄関スペース。ここで男女に別れています。
天井も壁も側面のタイルもピンクです。
そして市松模様のタイルに力強い「大正湯」の文字。
文字も、周りの縁の装飾も素敵です。
玄関のドアを潜るとこれまたレトロな脱衣所がお出迎え。番台、高いなぁ!!関西の番台の高さに慣れているので、ここの番台がとっても高く感じる。
番台には美人で上品そうな女将さん。レトロ洋風なこの銭湯にぴったり合う方です。
タタキの玄関で靴を脱ぎ、下駄箱に納めます。
木札の鍵は真っ直ぐにさすタイプ。ちなみに関西では斜めさしが多いので、こういう些細な違いでも遠くの銭湯に来た感じがして嬉しい。
脱衣所にはロッカーというロッカーはなく、常連さんは籠に依頼をおさめて床に置いていました。一応貴重品を入れられるようなロッカーもあります。
有名な銭湯だからでしょうか、常連さん以外に旅行者と思われる方もちらほらおられました。
男女の境の壁に設置された楕円形の鏡もレトロちっくで可愛いなぁ。
浴室はというと、改装されていてとても綺麗。
奥の壁に湯船が2つありました。
中央のカランにはタオルをかけられるスペースがあって、とても使いやすい。
さぁて、旅の疲れを癒すぞーと湯船にチャポン♨︎あぁ、いい温度です。
他のお客さんの会話が聞こえてくる。端々に北海道弁が混ざっていて少し聞き取りづらいところに、なんとも旅情が湧いてくる。
湯に浸かりながら函館で見た景色を振り返っていました。開港した時期が同じだからか、どことなく我が地元の神戸に似た景色があった。
けれど函館は神戸よりもずっと古いものが多く残っている。この銭湯もそのうちの一つ。
水害に戦災、そして震災。何の災いもなければ今の神戸でもこういう銭湯に出会えていたのだろうか。
何度も壊れ、その度に立ち直ってきた街。一方で失われたものも多い。
古いものへの羨望や敬意の気持ちは、もしかするとそういう土地に生まれ育った故なのかもしれない。
遠く離れた函館の風呂で、かつての神戸にもあったであろう景色に想いを馳せていました。
また来れるかな。また行きたいな。
大正湯さん、ありがとうございました!
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大正湯
〒040-0056 函館市弥生町14-9
営業時間 15時〜20時
定休日 月曜 金曜
【大津市】小町湯
大津駅から徒歩5分ほど。
明治時代からこの場所に湯を沸かす風呂屋に、今でも出会うことができます。
「小町湯」さんです。
湯暖簾が目に入った途端、その儚げな佇まいに鳥肌が立った。素朴なのに、えも言えない重みがあります。変わりゆく時代を見続けた重みなのか。日が暮れる前に撮っておかなければと急いで撮影しました。
遠くから見えた煙突。
そうこうしている間に、日が暮れた。
ライトアップです。
唐破風屋根に暖簾が2枚。
これもまた年代ものの湯暖簾。
滋賀風呂はレトロ暖簾の宝庫なのか。
この先にはどんな世界が広がっているのか。
一息ついて。いざお邪魔します。
暖簾の先には、広々としたコンクリート床のたたき。そして誰も座っていない番台。
あれ?店主さんがいないぞと思っていたところに「いらっしゃい。」と脱衣所の床に腰掛けているおばあちゃんが声をかけてくださった。
脱衣所に座布団を敷いて、寛いでいる。ここが女将さんの定位置なのだろう。緩いおもてなしに、なんだか心が和む。
小銭を手渡して、脱衣所にあがります。
脱衣所はというと、とにかくだだっ広い。
中央には何も置かれていない。壁側には小さなロッカー。反対の壁にベンチとおかまドライヤーが一台。かなり年季が入っていて、動くかどうかは不明。低めの天井から白熱灯の灯りが沁みるように空間を照らしている。
天井は格天井だ・・・っと上を見上げた瞬間、息が止まりました。
ガ・・・ガイコツ!!!
え・・!?何故!!!??誰!!!!???
近づいてよぉ〜・・・く見てみると、朽ちに朽ちた木彫りの福助さんでした。びっくりしたー!もはや原形がないその姿、難破船の先っちょについてるやつやないか。
手をついて座る福助さんの背中の丸みが、脱衣所に腰掛ける女将さんの佇まいとどこか重なって見えます。
浴室はというと、カランも浴槽もピカピカでとても綺麗。
入ってまず目に飛び込んだのが、奥の壁に施された大きな富士山のタイル絵。
おぉ〜、富士山!嬉しい。関西風呂ではちょっとレアな富士山モチーフに気持ちが上がります。男女の境の壁には、これまた大きな魚のタイル絵。
浴槽は真ん中に大きなものと、入口の脇に少し小さいものの二つ。主浴槽に足を入れると、おぉ熱い。壁には43度と書かれたプレート。実際はもっと熱そうです。
富士山の絵を眺めながら風呂に入るのは久しぶりだなぁと。またひとつ、いい風呂屋に出会えたことに喜びを噛み締めます。熱い湯に浸かりながらポカポカ、ポカポカと今日が終わっていく。平穏で、温かで、これが理想的な1日の終わり方だよなあ。
湯上がり後、しばらく脱衣所のベンチでぼんやりしていました。薄暗くて、静か。夜ってこんなに寂しいものだっけ。
なんだか去り難い。ここを出てしまうと、次はいつこの場所に還ってこれるか分からない。
すりガラスの向こうで流れていくヘッドライトの灯りが切ない。
今、この瞬間もいつかは時代の粒になる。
流されて、擦り減って、忘れられ・・。
生き残った粒が今日も寂しい灯りを照らしている。出会えるうちにまた来よう。
小町湯さん、ありがとうございました!
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小町湯
営業時間 15時半〜21時
定休日 月曜
【大津市】容輝湯
京阪石山駅から徒歩10分ほど。
「容輝湯」さんです。
なんて立派な唐破風屋根!!!閑静な住宅街に一際目を引くこの存在感。左右の派手な立て看板に全く負けていない。創業は約90年。
こりゃあテンションあがります。
建物裏とポスター。
右読みの「容輝温泉」の屋号看板も渋い。
では、お邪魔します。
事業継承され、若いオーナーさんが運営をされているもよう。中はとても綺麗でした。
フロントでお金を払って、女湯脱衣所へ。
古さもありつつ、清潔感のある脱衣所です。
ドライヤーも無料で利用可能。おかまドライヤーもあり。使いやすくて、十分銭湯感も味わえる、いい風呂屋ですねぇ。
さて、浴室へ。お〜中もピカピカだ!
ジェット風呂に深風呂、浅風呂、水風呂。
奥の壁には渓谷を描いたタイル絵。
おそらくこれは昔からあるものだと思います。
さてさて、身体を洗って深風呂へ。
ふぃーっ、リラーックス♨︎
壁には42度と書かれたプレート。このプレート、近江湯さんにも貼ってたな。
そして店主手書きのの容輝湯通信。ほぅほぅ、どうやらつい最近まで改装をしていたもよう。
ウッドデッキを手作りしました、と・・後で行ってみよう。
昔ながらの趣きを残しつつも、新しい風が吹いている銭湯。随所にオーナーさんの銭湯愛を感じることができて、とても心地良い。
湯上がりにパック牛乳を購入。
滋賀の学校給食に採用されている牛乳とのこと。美味しい。低温殺菌の牛乳が給食に出るのは滋賀県だけなんだとか(容輝湯通信の受け売りです♪)手作りデッキにて頂きました。
あー、居心地の良いお風呂屋さんだった!
心も身体もスッキリです。それにしても、立派な唐破風屋根だなぁ。去り際にもう一度振り返って、心の中で拝んで、また次の風呂屋へ。
容輝湯さん、ありがとうございました!
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容輝湯
営業時間 15時〜23時
定休日 火曜
【大津市】近江湯
滋賀県といえば、琵琶湖しかないという往年の自虐ネタがあるのですが、いやいや!滋賀県こそ隠れた名銭湯が息づく侮れない場所なんです。
いにしえの残り香を求めてこの日やって来たのは・・・
近江神宮駅から徒歩5分ちょっと。
閑静な住宅街のなかに溶け込みながら湯を沸かす銭湯がありました。
「近江湯」さんです。
これまた、なんつう年代物の湯暖簾を引っ提げてるんだ・・!1998年のもの。パステルカラーで爽やかな印象ですが、冬暖簾です。
屋根の上には鍾馗さん。
煙突。住宅の狭間にひっそりと。
では参りましょうか!
コンパクトな玄関。引き戸です。
下駄箱。これまたコンパクト。
KING錠。
引き戸を開けるとミニ脱衣所がこんにちは。
まだお若い奥様が番台に座られていました。
ロッカーは木製で、扉に生ガラスが嵌め込まれています。そして赤文字でアラビア数字がふられていました。間口はそれほど大きくないのですが奥に広い構造。そして錠は下駄箱と同様こちらもKING錠。レトロで可愛いロッカーです♪
男女の境には大きな鏡。そして番台の真横にも大きな鏡。脱衣所が広く感じる。
床には京都で使われていそうな四角い柳行李が一つだけ転がっていました。
さてさて、浴室へ。
浴槽は3つ。いずれも大人二人が入ったらいっぱいになってしまうくらいのサイズ。
1つの浴槽は41度、2つは42度。うちの1つがジェット風呂でした。
カランや床など、全体的にちょっと年季が入っている。京都と同じ文化があるのだろうか、床にベタ座りで身体を洗うご婦人を見かけた。
41度の浴槽はすでに先客が寛いでおられたので、お隣の42度の浴槽へ。
残暑でクタクタになった身体に心地いい。42って本当、絶妙な温度。
昼間に、知らない土地で、風呂に入る。
ちょっと酔狂じみているよなぁ。でも、これがいいんだよなぁ。額に汗を浮かべながら、行きしなにチラリと見えた、日に照らされてキラキラ光る琵琶湖の景色を思い出していました。
さてさて、滋賀風呂巡りはまだまだ続きますよ!湯上がりの余韻を楽しみつつ、次の目的地へ向かいます。
近江湯さん、ありがとうございました!
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近江湯
営業時間 15時半〜22時
定休日 火曜
【神戸市】高丸温泉
山陽電車が好きで、多少高くても、遠回りになっても、なるべく交通手段は山陽電車を使うようにしている。
と母に言うと「それお父さんと一緒やで。」と言われました。これが・・・親子の血というものなのか・・・。
海が望める駅です。
なんともロマンチックな駅から徒歩10分。
かつてニュータウンだった静かな住宅街に、1日に3時間だけ営業をしている風呂屋があります。
「高丸温泉」さんです。
創業は1957年。いかにも町のお風呂屋さんという風貌。西陽に照らされて素敵です。
風呂屋に入ろうとしていたおばあちゃんが、私が建物の写真を撮っていることに気がついてピタリと立ち止まりました。そして・・・
捲し上げられた暖簾を杖でヨイショヨイショと元に戻そうとしてくれている・・・!
おばあちゃんっ・・・(感涙)
急いで私もかけて行って、一緒に暖簾を引っ張りました。
「どうせ撮るんやったら綺麗にしとったほうがええもんねぇ。」
ありがとう、おばあちゃん。お陰様で綺麗な写真撮れましたよ・・!
風呂に入る前からほっこりしてしまった。
建物裏。ゴゴゴと湯を沸かす音が響きます。
営業時間は16時から19時までの3時間営業。
では、参りましょう!
コインランドリーも渋い〜!
ツバメの巣。すでに巣立ったあとです。
広い玄関。番台の裏側部分に美人画のタイル絵。
格天井。綺麗ですねぇ。
下駄箱。
鶴亀錠。
玄関の扉をくぐると番台と、この風呂屋の主人であるマダムがニッコリと出迎えてくれます。
天井を見上げると、玄関と同様に格天井。小さな窓には柄の入ったすりガラス。そして男女の境にはレトロな広告入りの大きな鏡。
ご主人が亡くなられた後も、奥様が一人で切り盛りをされています。なので営業時間も身体に無理がないよう限られた時間だけ。
神戸に残る、貴重な純銭湯です。
浴室はというと、まず目に入るのが壁一面のタイル絵と岩。そして岩の間から流れ出るお湯。
くぅう〜っ!たまらんですな。
身体を洗って早速湯船にチャポン♨︎
迫力満点の渓谷のタイル絵を眺めます。
このタイル絵と岩の装飾、繋がっているように見える。まるで絵の渓谷から飛び出したかのように岩を配置して、お湯が流れている。
そう思いながら浸かると、なお気持ちが良い。
そういえば、玄関のタイルも滝を眺める美人の姿絵だった。なんだか物語がある風呂屋だなぁ。
夏暖簾を見て、そろそろ衣替えしないとと思った。サヨナラ残暑、また来年。
高丸湯さん、ありがとうございました!
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高丸湯
〒655-0885
神戸市垂水区泉が丘4-4-36
営業時間 16時〜19時
定休日 月 水 金
【神戸市】宮本温泉
部屋に2日連続でゴキが出た。
まだ引っ越して2ヶ月ちょっとなのに。
前の部屋では一回も出なかったのに。
「これで大丈夫!」とありったけのゴキ対策グッズを買ってきた夫。
「ゴイゴイスー!」と言いながらあちこちにスプレーかけてました。本当に大丈夫かな・・。
ちょっとでもご機嫌になりたくて、この日やって来たのは灘駅から徒歩7分ほど。
「宮本温泉」さんです。
目の前は小学校。通学路に風呂屋があるって、なんかイイなぁ。一見、ミニ銭湯風ですが中は結構広いです。
2021年の牛乳石鹸のれん。
個人的に好きです、留紺に白字の力強い「ゆ」が湯心を誘います。
ネオンの屋号看板。明るい時間の訪問のため残念ながらライトアップの写真はなしです・・。
煙突。
では、参ります。
玄関。スヌーピー は十年以上はここに座ってると思われます 笑
おしどり錠。
ひょっこり。
玄関のドアを開くと番台と物腰の柔らかいお母様がお出迎え。
脱衣所はというと、結構独特な空間です。宗教関連の絵などの作品や仏具、本などが目につきます。仏様が柔らかな笑みを浮かべながら脱衣所を見下ろしている。
さてさて、ではでは浴室へ!
浴室は空間の真ん中にドン、と大きな浴槽が一つ。そして奥の壁は一面アルプスのモザイクタイル絵。そして片側の壁にカラン。
カランはなかなかの古さを感じますが、なぁに、銭湯好きとしてはちょいと鄙びてるぐらいのほうが、かえって萌えるわい。(萌え って、もう死語だろうか)
身体を洗って浴槽へ。熱過ぎず入りやすい湯加減です。大きな湯船は気持ち良い。さらに目の前には巨大なモザイクタイル絵。
あぁ、風呂だ。これぞ風呂屋の風呂だ!
アルプス風景のモザイクタイル絵というのは風呂屋における十八番だと思う。
ペンキ絵といえば富士山。
そして、モザイクタイル絵といえばアルプス。
開放的な風呂には、開放的な絵がよく似合う。
ヨーロッパにもゴキって出るのかな・・。
あぁ、いかんいかん。美しいタイル絵を眺めながらヤツのことを考えるのはやめよう。
さて、帰って晩御飯作るか!
宮本温泉さん、ありがとうございました!
【神戸市】戎湯(風呂跡)
記憶とういのは、頭のどこかには必ず残っていて、無くなることはないらしい。
ただ、その記憶に辿り着けるか否かの問題というだけで。
昨年からずっと休業状態だった戎湯さんが今年の3月に閉業されました。
上の写真は、休業前に訪れた時に撮影したものです。ブログを始める前は全く写真などを撮らなかった私が、何故かこの一枚だけは残していました。
これが最後の訪問になると予感して・・・というわけではなく。純粋に、美しい風呂屋だなと思ったから撮ったものです。
休業に入ったのはその直後。
ちょうど神戸の銭湯で行われていた「神戸オフンロ巡り2」が終わって間もなくのことでした。
休業が一ヶ月、二ヶ月、そして半年と続くにつれ嫌な予感が募り、どうかこの予感が外れてくれと祈りながら、今年の初めに休業中の戎湯さんを訪れました。
苅藻駅から徒歩10分ほど。
下町情緒を残す住宅街の中に、シンプルながらも目を引く風呂屋。
「戎湯」さんです。
白い壁にぐるりと囲むように施されたレンガ。
そして壁に溶け込むような、淡い色合いの屋号看板。渋いながらも優しい趣きが漂っています。
アルミの引き戸越しに、湯のれんがかかっています。この湯のれんがもう一度、表で揺れているところを見たかったです。
建物の側面部分。こちらにもレンガが施されています。表のレンガに比べると年季が入っているようにも見受けられます。
煙突。
建物の裏側は、表側とはまた違った表情を見ることができます。
私が戎湯さんを訪れたのはたったの二回だけ。
突然の臨時休業、からの閉業だったため、最後の訪問が叶いませんでした。
記録がなく、もう記憶の中でしか戎湯さんに出会うことができません。
湯のれんの先にはえびす様のタイル絵がお出迎えしてくれたこと。テレビのない静かな脱衣所。ゆったりと時を刻んだ振り子時計。戎湯さんについて書かれた新聞記事を大事に飾っていたこと。そして薪で沸いたお風呂。
その全てが、決して華やかではないけれど心安らぐものでした。
記憶は無くならない。
本来あるはずの記憶の、ほんの一部しか辿り着くことができないとしても。
ここに来て、安らいで、ホッとした。
また行きたかった。
この気持ちも、決して無くならない。
戎湯さん、ありがとうございました。
【神戸市】笠松湯
阿部一二三選手と阿部詩選手が同日金メダルの快挙!もう勝った瞬間声出ちゃいました。
しかもお二人の出身が神戸の和田岬。同郷の選手の活躍はなおさら嬉しい。
「こりゃ、今週はあの風呂屋で決まりやね。」
そう思ってやって来ました。
和田岬駅から徒歩5分ほど。
なんともノスタルジックな商店街の中を歩くと現れるのが・・・
「笠松湯」さんです。
屋号看板にそそられる。
優しい色合いの外観です。
煙突。渋いぜ。
コインランドリーの場所も渋いぜ。
あ、ニャンコ。窓から鳩を見つめてました。
ではでは、お邪魔します!
下駄箱。
鶴亀錠です。
オフンロ巡り2のポスターで隠れているので分かりづらいですが、番台裏はアーガイル柄のタイルが施されています。綺麗だなー。
玄関のドアを開くと番台、そしてこれまたノスタルジックな脱衣所がお出迎え。
テレビはなく、静寂な空間。男女の境には木枠の鏡が設置されていて、その上には立派な神棚が飾られています。
まさしくこれぞ正統派銭湯。おそらく神戸に現在する銭湯の中で一番渋いのはここじゃないかと思う。神戸に残る、貴重な空間です。
さて浴室はというと、真ん中に大きな長方形の湯船がドンと一つ。そして天井の梁にはアルプスの風景を描いたモザイクタイル絵。
壁ではなく梁に描かれているため、男女の境で絵が途切れることがなくその全容を拝むことができます。ちなみに壁には、タイルで蔓草模様が描かれています。こちらもレトロで素敵です。
あと、もう一つ特筆するべき点が床。
目に見て分かるほどに傾斜がついてます。
従って、カランも奥に行くほど低く、手前に行くほど高くなっています。
どこの銭湯も水捌けのため多少の傾斜はあるものの、ここまでハッキリ高低差があるのは珍しいのではと思う。
では身体を洗って早速湯船へ。ちょうどいい温度。大きいお風呂はやっぱりいいなぁ。
日差しがたっぷり降り注ぐ湯船。気持ちいいです。アルプスのタイル絵を拝みながら、夢心地になりました。これぞ真夏の夢。
湯上がりに瓶ラムネを買いました。
瓶のラムネ、ひっさしぶりだなぁ。
「美味しい?」と番台のマダム。
「美味しいです!」と私。
これがもしかしたら、今年唯一の夏らしい思い出かもなぁと思いながら飲み干しました。
日本の夏には風情がある。
夏の風情と風呂の情緒は、妙にしっくりくる。
笠松湯さん、ありがとうございました!
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笠松湯
営業時間 15時半〜20時半
定休日 火曜
【姫路市】明和温泉
完全に見誤ったな、と思いながら炎天下のなかペタペタ歩き続けました。
徒歩37分を甘く見ていた。この時期に無茶しちゃいけません。
汗だくだくのフラフラでこの日やって来たのは・・・
「明和温泉」さんです。
姫路駅から徒歩37分。
京口駅からだと徒歩15分(ただし便が少なめ)
夏の空にも負けないこの真っ青な外壁!
そしてデカデカと書かれたゆの文字!!
たとえ湯のれんが捲し上げられていても、ここが銭湯だということは一目瞭然。
煤けた煙突がひょっこりと顔を出しています。
ちょっと裏側へ回ってみましょう。
こちら建物裏。周りに大きな建物がなく、また角地の風呂屋なのでどの角度からでも煙突を拝むことができます。
暑い&歩き疲れたので早速参りましょう。
玄関。コンパクトです。
おしどり錠。
玄関をくぐると番台がお出迎え。
番台からは女性側の脱衣所が完全に見えないように仕切られていました。
そして、涼しい・・・。
夏場の脱衣所はひぃんやりしていて本当に気持ちいい。思わず夏を感じる。
ちょいと一休みして、浴室へ。
向かって左の壁にカラン。右に浴槽という造り。さて汗を洗い流すぞと頭からシャワーを浴びます。うおっ、かなかなの熱さ。
熱さでやられた体に熱いシャワー。これだけでのぼせてしまいそう。
体を洗って、熱さに耐えられなくなったので早速水風呂へ。
うおっ、うおっ、うおっ、・・・ふぃ〜。
肩まで冷たい水風呂に浸かって、シャキッとしました。なんだろうこの清々しさ。肺まで冷たくなる不思議な感覚。家の風呂ではまず体感できないこの喜び。
水風呂で体を整えたので、湯船へ。
お、てっきり熱湯かと思いきや入りやすい温度です。ぐーっと足を伸ばし深呼吸。あぁ、よく歩いた・・・。やっぱり湯は癒される。
夏の暑さでやられた心身を温かい湯で癒す。
矛盾?いえいえ。
心を癒やしてくれるのは、やっぱり冷たいものより温かいものです。
夏風呂を存分に堪能しました。
さて、また汗だくになりながら帰るぞ!
矛盾?いえいえ。
それも含め夏の風呂散歩の醍醐味です。
明和温泉さん、ありがとうございました!
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明和温泉
営業時間 15時半〜22時
定休日 なし
【神戸市】たちばな湯
風呂と全く関係のない話で恐縮なのですが、先日結婚をしました。
新生活の準備やら引っ越しやらでバタバタしていて、全然風呂に行けていなかった。ブログからも離れてしまっていました。
ようやく落ち着いたので、ぼちぼち風呂散歩を再開しようと思います!
そんな久々な風呂散歩なのですが、非常に残念なお知らせが舞い込んできました。
たちばな湯さん廃業のお知らせ。
6月いっぱいまでの営業とのこと。
このところ、神戸銭湯の廃業のお知らせが相次いでいて、とても悲しい。
梅雨の晴れ時を見計らって・・・最後のたちばな湯さんに会いに行ってきました。
大倉山駅から徒歩10分ほど。
なだらかな坂の途中にあるのが・・・
「たちばな湯」さんです。
昔ながらな雰囲気漂う外観が特徴のお風呂屋さん。創業は1955年。
暖簾上のライトも、可愛いでしょ♪
煙突。
では参りましょう!
玄関。暖簾をくぐると外の喧騒から隔離されます。床もドアも壁も木材が使用されていて、さらにこの薄暗さがどこか懐かしくて、優しくて、沁みます。
おしどり錠。年季入ってます。
玄関のドアをくぐるとフロントがお出迎え。
もちろん内装もフロントも木材仕様。
木の香りがいっぱいに漂います。
照明は暖色系の灯りで、この哀愁が風呂ファンの心をガッチリ掴んでいます。
フロントでお金を支払って、脱衣所へ。
脱衣所はコンパクトめの造り。
天井は格天井で、これにもやはり風呂ファンの心をガッチリ。
ちなみに、浴室はめちゃくちゃピカピカ。
カランも数年前に入れ替えたばかりなので新しいです。
銭湯としての使いやすさ、そして昔ながらの雰囲気を味わえるバランスの取れた風呂屋なのです。(廃業してしまうのが本当に惜しい)
浴槽は男女の境の壁に横並びで設置。
薬湯と泡風呂と電気風呂と普通の浴槽。
身体を洗って、浴槽へ。
なんだかんだで、私はやっぱり普通の浴槽でゆっくり温まるのが一番好きです。
しばしのほほんとしていると、常連のおばあちゃんが声をかけてくだった。
「おねーちゃん、この辺の人?」
私「いえ、電車で来ました。廃業されると聞いたので・・。」
「せやで、6月いっぱいで終わりみたいやな。おばちゃんな、家に風呂ないのに。これからどこで風呂入ればええんやろ。」
おねーちゃん家の風呂入れてーなと笑いながら言われました(笑)
「おねーちゃん、家族と住んでるん?」
私「いえ、一人暮らしです。」
と答えた時、ふと気が付いた。この日は独身最後の週末だったと。
独り身最後の週末は風呂に浸かりけり・・・相変わらずな過ごし方に少しニヤッとしてしまった。
「一人暮らし、気をつけなアカンよ!最近物騒な事件多いからね!!おばちゃんはクソバッバァやから大丈夫やけど!!!」
そんなことないですと言いながら和やかな時間を過ごす。そうそう、風呂ってこういう場所なんだよな。
「ほなね、またね!」
とおばあちゃんは浴室を後にしました。
この風呂屋はなくなる。お互い、きっとまた会うことはない。そう分かっていても
「また!」と返してしまう。
一人になった浴槽で、切なさを胸に最後のたちばな湯の湯を堪能しました。
たちばな湯さんは、風呂に目覚めた大学時代から社会人になってからも、何度も訪れた風呂屋でした。
訪れる度に、幸せな、温かい気持ちになれた。
訪れる度に、またねと心の中で呟いた。
これが、最後のまたね。
たちばな湯さん、ありがとうございました。
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たちばな湯
【京都市】錦湯
そういえば、ずっと行きたい行きたいと思っていたのに、いつも後回しにしていた風呂屋が京都にあったな。
そろそろあそこに行きたいな。もう行かんとな。うん、行こう!そうだ京都行こう!!
そんなこんなで京都の風呂を巡っていたわけですが、この日訪れた最後の風呂は・・・
「錦湯」さんです。
美と迫力を兼ね揃えたこの圧倒的存在!!
I am NISHIKIYU って感じ!!
創業は昭和二年。京都らしい町屋造りのお風呂屋さん。
こんなにも簾が映える風呂屋が他にありますか。もう、外観を眺めているだけでも充分に価値があります。幸せです。
タイル使いが美しい京風呂。木枠の建具との相性も抜群ですね。シンプルな湯のれんは錦湯さん専用のもの。デザインと色合いに品があって、建物によく合っています。
では、お邪魔します!
木製の引き戸を開けるとたたきの玄関がお出迎え。すぐ横には年代物の番台と下駄箱。外観だけでなく、内観も美しい木造建築美が広がっています。使い込まれた木製ロッカーの上にズラリと並べられた柳行李は圧巻です。もはや文化財レベル。この光景を見るために京都まで来たんだよ、あたしは・・。
マニアにとっては尊過ぎるこの空間が、常連さんによっては日常の一部に過ぎないという。
物も建物も、大事に使い継がれたものには生が宿っていると思う。そんな生に溢れた空間に心が震えてしまう。感動したということです。
浴室はというとカランにゆったりとスペースがあって、奥の壁に浴槽が設置されています。
この日三湯目にして、カランの前にべったりと座りながら身体を洗うご婦人を発見!
おお、これぞ京都式。京都の古い銭湯で見られるこのスタイル。こういう地域ならではの光景、時代が変わっても残り続けてほしいと切に願います。
ご婦人に習って私もベタ座りで。身体を洗って、さぁいよいよ入浴だ!という時に、ふと壁に貼ってあるテープに目がいきました。テープにはこんな文字が。
Go to Heaven
・・・なんだ、コレ。
よく見ると、壁のあちこちに同様のテープがペタペタと貼ってある。
Go to Heaven
Go to Heaven
Go to Heaven
いざ、天国へ。って感じか?
不思議な気持ちになりながら浴槽へ。
ふぃ〜アツアツだ〜♪極楽極楽・・・。
いやいや、天国天国・・・♪
ふとヴィーナスの湯口を見ると、何やら目と額にキラリと光る石のようなものが嵌め込まれている。普段であればなぜ・・とツッコんでしまいそうですが、ここは天国。アツアツの湯煙の向こうで、ナマステ〜と笑うヴィーナスの声が聞こえてきても、受け入れられる・・。
しばし、夢を見ていた気がする。
湯上がりにライトアップした外観を見たかったのに、めちゃくちゃ明るい。季節が変わったのですね。次は夜にお邪魔しよっと!
錦湯さん、ありがとうございました!
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錦湯
営業時間 16時〜23時半
定休日 月曜
【京都市】錦生湯
見知らぬ土地で、不意に風呂屋の煙突を見かけるとキューンとして、嬉しくなってしまう。
ましてやそれが一人でいる時なら、居ても立っても居られなくなるわけでして。
こんな建物裏を見てしまうと、そりゃもう正面玄関も見ないわけにはいかないもんでして。
静かな通りを進むと現れたのが・・・
「錦生湯」さんです!
ラッキー、開いてる!!と思わずガッツポーズ。建ち並ぶ住宅の中にすんなりと溶け込んでいるこのミニ銭湯感が堪らん。
これから抹茶スイーツでも楽しもうと思っていたのですが・・・出会ったからには仕方ない。
予定を急遽変更で錦生湯さん、お邪魔します!
暖簾の先に現れたのは障子張りの引き戸が特徴の玄関。素朴で全体的にスッキリとした印象。
キングの錠。
障子扉の先には番台の脱衣場がお出迎え。
番台の先には金ピカの招き猫と大入額。
浴室扉の頭上に吊るされたチューリップ型の照明がレトロで可愛い。
桶と風呂椅子は脱衣場にあるので、忘れずにしっかりと持って浴室へ。
向かって右側はカラン、左側の壁に浴槽。
薬湯の香りが湯気と一緒にホワホワと漂っています。
身体を洗って浴槽へ。先ほど劇的に熱い風呂に出会ったばかりなので、おそるおそる・・・あ、大丈夫だ。
警戒心が解けたら一気に脱力モード。春の京都で風呂巡り、贅沢です。この日は二湯目でこの後も別の風呂屋に行く予定だったので少しだけ温まって出ました。名残惜しいですが、次の京都へ風呂巡りの時にでも訪れようと思います!
素朴でこじんまりとした、魅力満点の風呂屋でした。錦生湯さん、ありがとうございました!
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錦生湯
京都市中京区壬生坊城町8の20
営業時間 15時〜24時
定休日 日曜