【神戸市】戎湯(風呂跡)
記憶とういのは、頭のどこかには必ず残っていて、無くなることはないらしい。
ただ、その記憶に辿り着けるか否かの問題というだけで。
昨年からずっと休業状態だった戎湯さんが今年の3月に閉業されました。
上の写真は、休業前に訪れた時に撮影したものです。ブログを始める前は全く写真などを撮らなかった私が、何故かこの一枚だけは残していました。
これが最後の訪問になると予感して・・・というわけではなく。純粋に、美しい風呂屋だなと思ったから撮ったものです。
休業に入ったのはその直後。
ちょうど神戸の銭湯で行われていた「神戸オフンロ巡り2」が終わって間もなくのことでした。
休業が一ヶ月、二ヶ月、そして半年と続くにつれ嫌な予感が募り、どうかこの予感が外れてくれと祈りながら、今年の初めに休業中の戎湯さんを訪れました。
苅藻駅から徒歩10分ほど。
下町情緒を残す住宅街の中に、シンプルながらも目を引く風呂屋。
「戎湯」さんです。
白い壁にぐるりと囲むように施されたレンガ。
そして壁に溶け込むような、淡い色合いの屋号看板。渋いながらも優しい趣きが漂っています。
アルミの引き戸越しに、湯のれんがかかっています。この湯のれんがもう一度、表で揺れているところを見たかったです。
建物の側面部分。こちらにもレンガが施されています。表のレンガに比べると年季が入っているようにも見受けられます。
煙突。
建物の裏側は、表側とはまた違った表情を見ることができます。
私が戎湯さんを訪れたのはたったの二回だけ。
突然の臨時休業、からの閉業だったため、最後の訪問が叶いませんでした。
記録がなく、もう記憶の中でしか戎湯さんに出会うことができません。
湯のれんの先にはえびす様のタイル絵がお出迎えしてくれたこと。テレビのない静かな脱衣所。ゆったりと時を刻んだ振り子時計。戎湯さんについて書かれた新聞記事を大事に飾っていたこと。そして薪で沸いたお風呂。
その全てが、決して華やかではないけれど心安らぐものでした。
記憶は無くならない。
本来あるはずの記憶の、ほんの一部しか辿り着くことができないとしても。
ここに来て、安らいで、ホッとした。
また行きたかった。
この気持ちも、決して無くならない。
戎湯さん、ありがとうございました。