【大津市】小町湯
大津駅から徒歩5分ほど。
明治時代からこの場所に湯を沸かす風呂屋に、今でも出会うことができます。
「小町湯」さんです。
湯暖簾が目に入った途端、その儚げな佇まいに鳥肌が立った。素朴なのに、えも言えない重みがあります。変わりゆく時代を見続けた重みなのか。日が暮れる前に撮っておかなければと急いで撮影しました。
遠くから見えた煙突。
そうこうしている間に、日が暮れた。
ライトアップです。
唐破風屋根に暖簾が2枚。
これもまた年代ものの湯暖簾。
滋賀風呂はレトロ暖簾の宝庫なのか。
この先にはどんな世界が広がっているのか。
一息ついて。いざお邪魔します。
暖簾の先には、広々としたコンクリート床のたたき。そして誰も座っていない番台。
あれ?店主さんがいないぞと思っていたところに「いらっしゃい。」と脱衣所の床に腰掛けているおばあちゃんが声をかけてくださった。
脱衣所に座布団を敷いて、寛いでいる。ここが女将さんの定位置なのだろう。緩いおもてなしに、なんだか心が和む。
小銭を手渡して、脱衣所にあがります。
脱衣所はというと、とにかくだだっ広い。
中央には何も置かれていない。壁側には小さなロッカー。反対の壁にベンチとおかまドライヤーが一台。かなり年季が入っていて、動くかどうかは不明。低めの天井から白熱灯の灯りが沁みるように空間を照らしている。
天井は格天井だ・・・っと上を見上げた瞬間、息が止まりました。
ガ・・・ガイコツ!!!
え・・!?何故!!!??誰!!!!???
近づいてよぉ〜・・・く見てみると、朽ちに朽ちた木彫りの福助さんでした。びっくりしたー!もはや原形がないその姿、難破船の先っちょについてるやつやないか。
手をついて座る福助さんの背中の丸みが、脱衣所に腰掛ける女将さんの佇まいとどこか重なって見えます。
浴室はというと、カランも浴槽もピカピカでとても綺麗。
入ってまず目に飛び込んだのが、奥の壁に施された大きな富士山のタイル絵。
おぉ〜、富士山!嬉しい。関西風呂ではちょっとレアな富士山モチーフに気持ちが上がります。男女の境の壁には、これまた大きな魚のタイル絵。
浴槽は真ん中に大きなものと、入口の脇に少し小さいものの二つ。主浴槽に足を入れると、おぉ熱い。壁には43度と書かれたプレート。実際はもっと熱そうです。
富士山の絵を眺めながら風呂に入るのは久しぶりだなぁと。またひとつ、いい風呂屋に出会えたことに喜びを噛み締めます。熱い湯に浸かりながらポカポカ、ポカポカと今日が終わっていく。平穏で、温かで、これが理想的な1日の終わり方だよなあ。
湯上がり後、しばらく脱衣所のベンチでぼんやりしていました。薄暗くて、静か。夜ってこんなに寂しいものだっけ。
なんだか去り難い。ここを出てしまうと、次はいつこの場所に還ってこれるか分からない。
すりガラスの向こうで流れていくヘッドライトの灯りが切ない。
今、この瞬間もいつかは時代の粒になる。
流されて、擦り減って、忘れられ・・。
生き残った粒が今日も寂しい灯りを照らしている。出会えるうちにまた来よう。
小町湯さん、ありがとうございました!
----------------------------
小町湯
営業時間 15時半〜21時
定休日 月曜