【大阪市】延命湯
まったくの余談だが
今から3年ほど前、私には大阪在住の彼氏がいた。年上のインテリ彼氏で、私と付き合うには勿体ないくらいのスペックの持ち主だった。
彼とはよく、福島の飲食店で食事をした。
福島駅周辺は小洒落た店がたくさんあって、いつでも多くの人で賑わっている。
当時あまり大阪に詳しくなかった私は、いつも彼の後を着いて歩いていた。
そしてある日、飲食店がひしめき合う狭い路地裏で私は見つけてしまったのである。
暗い路地の向こうで赤く光る
「ゆ」の文字を・・・・。
「こんな場所に風呂屋がある!」
私は興奮気味に声をあげた。
そんな私と、その「ゆ」の文字を見て
彼はぼそっと言った。
「やめとき。汚そうやし。」
・・・・・。
風呂のロマンが分からない男だった。
私は黙って、また彼の後を着いて歩いた。
あれから時は流れ、
あの頃の彼は過去の人となった。
そして、私は再びこの地
福島に一人降り立った。
前置きが随分長くなりましたが
私にとってこの銭湯は、風呂のロマンを知らない彼をほんのりと思い出させる、ちょっとセンチメンタルな銭湯なのです。
当時、福島にはよく通っていましたが
不思議なことにどの店に行ったとか、どんなものを食べたとか、全く思い出せないのです。
ただ、ひとつ覚えていること。
あそこには、路地裏で怪しく誘う
魅惑の銭湯があった。
そして私は、
その風呂屋に本当はすごく行きたかった・・。
ね?
気になっちゃうでしょ、こんなの。
というわけで
「延命湯」さんに行ってきました。
なかなかモダンな外観。
調べたところによると関西を代表する建築家の一人、竹原義二さんが建築を手がけた銭湯なのだそう。
さらに、竹原義二さんが初めて「建築賞」を受賞したのも、この延命湯さんだったそう。
ひとつの建造物としても高く評価されているのですね。素晴らしいです。
下駄箱には、大きなキャリーバックを引きずらないようにという注意書きがされていました。
場所柄、旅行者の方も多いのですかね。
外観もモダンで特徴的ですが
内観もかなり珍しい感じでした。
番台式ですが、カーテンでしっかり脱衣所と仕切られています。
カーテンの先にあるのは、曲線の壁が美しい脱衣所。
けれどここは銭湯。
味のある渋さもあります。
モダンと渋さが混ざり合っているなんともハイカラな不思議空間でした。
浴室も、思わず「おっ」と声を出してしまうほど珍しい作り。かなりデザイン的です。
見たことのない形の湯船が目を引きます。
潜水艦をイメージして作ったのだそう。
そして脱衣所と同様、浴室も緩やかな曲線を描いたつくりです。天井も高くて気持ちが良い。
お写真でお見せできないのが本当に残念・・。
デザイン性に富んだ、ほかの銭湯ではなかなかお目にかかれない面白い銭湯でした。
あの頭ばっかり良い、インテリ男にも教えてやりたい。
延命湯さんは、決して汚くなんてない。
むしろ、美しい。そして、魅力的な銭湯だということを・・・。
(追記)
2020.12に再訪致しましたので、写真を追加します。前回は暗くてよく分からなかった外観を今回はバッチリ見ることができました。
コンクリート壁の玄関。
脱衣所の壁もコンクリートです。
建物裏です。
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延命湯
〒553-0003
営業時間 16時〜23時
定休日 火曜日